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とるにたらない
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炎天の大気に曝されてふと仰ぐ。
重厚な雲が浮かぶ空は照り付けるばかり。
時折思い出したかのように吹き出る汗を拭い、纏った衣に不満を溢したくなる。
都への道程は遥か。
それを自らの足で踏みしめながら進む。
道中見上げた鳥居の、思いの外涼しげな石柱に触れ、暫し憂き世を忘れた。
此の旅路は常ならば座して揺られるだけで良いものだったけれども
地と繋がった二本足で進んで行くからこそ深みが見えるというもの。
青々と繁る草花は、歩めば無数の虫を散らす。
纏わりつく熱気、
それこそも此所で息をしている証。

春は爛漫
そこかしこで息づく生命
夏は喧騒
昼夜問わず響く蝉と蛙の音秋は紅
山々の上で暮れない陽射し冬は哀惜
白く凍りついた沈黙

四季折々
すべてが此の目に耳に鼻に舌に肌に馴染むようにして存在している。

其れを識っているだけではなく
間近で感じたことがある、ような気がするのだ。


そう、云って
酷く愛おしいものを懐かしむかのように
想い続けた相手へとセレナーデを唄うように
その唇が彼方を見据えながら言葉を編むのを

黙って見つめる、淡い暖色の午後。


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