屍鬼 ７巻 2010-02-27-Sat 15:54

フジリュー屍鬼の７巻をようやっと買ったので
感想というか考察。


どうしても書きたくなった。笑

６巻の最後を見た辺りから何となく予測はしていたというか何というかなんだけども、本当に漫画と小説はまた別物だね。
前までは小説を漫画にするにあたっての脚色だとか、そういう範囲なのかなあと思ってたけども。
夏野が起き上がっている時点で小説と漫画は別ストーリーだと言っても過言じゃない気がする。

漫画とアニメで話が違うのってよくあるし、そういう面で見るとそれと同じようなもんなのかな。
アニメはアニメなりの展開っていう、それを良く捉える人もいれば私みたいに原作重視の人はいるわけで。
いかに原作を再現してくれるかっていうのを求めてるわけだから、やっぱり原作の世界観や話の大筋を逸らされると納得いかないものがあるんだよな。「え!?なんでこれこうなんの！もう！」とか。笑
実写化とかアニメ化とかするとどうしても不満だったりとかね。
ごくたまに期待以上のやつもあるけど、そういうのはすごいと思う。うん。
まあ要は、～化っていうのは基本的に作者をあまり介してないものだからいまいち納得いかないとこがあるのかなと思うわけで。
後は目に見えない力で「視聴率を上げるためにキャスティングを云々」とか「このキャラをこうした方が面白そう」とか、そういういらんものが入っていくから駄目なんやと思う。

さておき。
屍鬼の漫画は、完全に「藤崎竜の漫画」なわけです。
原作と作画が違う漫画はたくさんあるけど、そういう作者二人でやるやつと違って「小説を漫画化」だから、やっぱり個人で持った世界観だとかそういうものを前面に押しているわけだし、そうなると「原作に忠実」は望めない。
なんてことは漫画化が決まったときに公式サイトで見た清水恵の髪の毛がドピンクだったときからわかってたことなんですが（笑）

漫画では夏野がかなりの主人公格だなあとは思ってたんですが、でもまさか起き上がらせちゃうとはなあ。
小説を読んでたときは確かにそれを熱望してたんだけど、漫画であっさりそれをやられてしまっても……うーん複雑。
でも夏野を起き上がらせて、どういう展開にするつもりなんだろう。
起き上がった以上は屍鬼なわけで、そうなると維持するための食事も必要となる。でも夏野は屍鬼を憎んでいる。屍鬼を憎んでいるのに屍鬼と同じように人を襲って生き永らえるのか？
その点に関して大きな矛盾になる。

屍鬼が呪われた町と違うところは、
呪われた町が吸血鬼という侵略者を前に勇気ある主人公格の仲間たちが抗い闘い勝利を得る、そういうヒーロー性のある物語であるのに対して
屍鬼では屍鬼となった村人の各々の思惑があり、人でありながら屍鬼を羨み、屍鬼であることに震え、そういう葛藤が交錯する内面の物語だ。
「敵」を倒してめでたしめでたし万々歳という話ではない。

起き上がった徹は辰巳から指示されて夏野を襲う。
そうしないと家族を襲わせると脅されていて、そしてもうひとつ。
どうせ誰かに襲われるくらいなら自分が親友の息の根を止めたい。
夏野は抵抗するが、結局は死を受容して静かに息を引き取っていく。
徹は夏野の墓に花を添えに行く。しかしそこから夏野が起き上がってくることはない。
夏野は人としてのみ生きて死に、最後は徹を責めなかった。
その夏野の優しさがどうしようもない罪悪感を喚起し、徹は苦しみ自棄になっていく。

とまあそういう話なんだが、
ここで夏野が起き上がって徹を責め、屍鬼でありながら屍鬼と敵対した存在になる、という展開になると話は大きく変わってしまう。
起き上がったということは結局死んだが死ななかったということで、そこでひとつ徹の苦しみが軽減する。

また、幼馴染の静信の理解を得られず孤立していき、最後は追い詰められたように暴徒を率いることになる敏夫も、夏野という理解者を得ればまた話が違うものになるのだろう。


……そういう「もしも」のパラレルストーリーを書きたかったってことでFAなのかな？笑
それはそれで別にいいんです、藤崎竜を否定しているつもりでもなくて、ただ単に原作至上主義として書きたくなっただけで。

で、７月にアニメ化するそうじゃないですか。
勿論漫画を基準にアニメ化されるわけだから、そこでちょっと気になってしまっただけです。
でも公式サイト見たら雰囲気は割とよかったな…音楽とか。
なんかひぐらしに似たものを感じたけど。
（村、そしてその素朴な佇まいと対照的な人物など）

個人的に屍鬼は実写化してほしいけど、期待過多でだめそうな気もしなくもないや。
少年誌的な改変抜きでリアルにやってほしい。
うーん、難しいかなやっぱ。